東日本橋にあるギャラリーヨルカにて、和紙作家、森田千晶さんの展示がありました。
テーマは「城とかがみ」。
ダークトーンの薄暗い壁のギャラリーに、白い和紙のお城が幻想的に浮かび上がります。
もはやこれは言葉になりません。
しばらく静かにこの世界に浸っていたい気分です。
以前にも同じギャラリーで森田さんがレースをテーマに展示をしていたことがあり、
そのときに自身の作品を眺めていたら、ふとレースの先端がお城に見えてきたのだとか。
そこでインスピレーションを得て、今回の展示が実現しました。
お城のモチーフは、
ドイツのノイシュバインシュタイン城や、フランス・ロワール地方のお城など、
たくさんのお城の写真を見て研究したそうです。
現実にあるものをある程度忠実に再現したそうですが、
やっぱりお城には空想的なロマンチックさがあります。
和紙という素材から醸し出される儚さや透明感が、
一層、夢のような、現実離れした世界を造り上げています。
和紙でこんなにも繊細で可憐な世界が導き出されるとは。
ただただもう、うっとり眺めるより他ありません。
ずいぶん前に森田さんの工房へ伺ったとき、
工房の庭には、自身で育てた和紙の原料であるコウゾ、ミツマタなどがあり、
それらを大きな鍋でグツグツ煮ていました。
華奢な体でにこにこ笑っていた森田さんでしたが、
和紙作りはなかなかハードな力仕事です。
紙を漉くのは一瞬ですが、原料を育てて、刈り取って蒸して、丁寧に手で皮を剥いで、
天日で干して、洗って煮て、繊維を取り除いて・・・と、
漉く一歩手前までの状態にするのがとても大変です。
この繊細な世界を作り出すのにどれだけの労力が必要なのかと考えると気が遠くなります。
本当にいつまでも見ていたい、感動的な展示でした。
壁に映った影まで素敵でした。