作品のない展示室
砧公園に散歩に来たら、世田谷美術館でこんなことやってました。
「作品のない展示室」
ええ!美術館なのに、作品がないなんて!!
世田谷美術館の設計は、建築家の内井昭蔵。
お恥ずかしながら、今回初めて建物に注目して、知った方でした。
改めて建物をじっくり見てみると、なかなかユニークで面白い。
内井さんは父も祖父も建築家で、父が神田のニコライ堂や小田原のハリストス教会などの設計に関わっていたので、
幼少期から教会で過ごすことが多かったらしい、という経歴を聞くと、
この建物にも、内井さんらしい風情が出ているのだなと感じます。
壁の装飾はアラブの寺院のようでもあるし、沖縄やバリ島など、南国の建物みたいでもある。
砧公園の森に埋れ、後ろの煙突がちょっと面白い借景になっていて、
穏やかで落ち着いているのだけど、どこか非現実の世界に潜り込んだような、不思議な感覚がありました。
中に入ると、確かに、何も展示されていません。
でも入ってまず、「うわ、きれい」と思ってしまった。
世田谷美術館は開放的な美術館で、窓が大きく、自然光が入り、外の景色が圧巻の迫力で目に飛び込んできます。
もう、これが作品なのでは?!
今まで何度もこの美術館を訪れていましたが、箱として意識するのは初めてのことでした。
がらーんとした空間に、ただ自然がある。
これは果てしなく贅沢な展示なのでは?!
美術館を建物としてじっくり観ると、また色々な発見があります。
いつも作品に集中していたので、案外狭いところしか見ていなかったのかもしれない、と気づかされました。
壁のところどころに、内井昭蔵の言葉があります。
ショーケースには何も入っていません。
でも何もないことで不思議と想像力を掻き立てられます。
何もないことを意識するって気持ちいい。
このさらに奥の部屋では、世田谷美術館で今まで展示された企画のポスターや映像が紹介されていました。
入場無料だし、ほぼ何もないがらんどうなのですが、
違う視点に気づき、空想を広げ、いろんなものが体に自然に入ってきて、
うーん、なぜだろう、ものすごく豊かな満たされた気持ちになりました。
世田谷美術館のあるこの公園、この街に、愛着も湧いてきました。
何かに煮詰まった時、気持ちを切り替えたい時、リフレッシュできそうです。
コロナ事情による、やむなき開催であるにしても、
世田谷美術館、ずいぶんと洒落た試みをするものです。
mtと全く関係ない話を延々紹介してしまいましたが、
mtの企画展をやっている各地の箱も、すごく風情があったりカッコいい建物であることが多くて、
箱の持つ力が、中に展示する作品との相乗効果をもたらしているということを改めて思ったのでした。
こちらは8月27日までやっているので、興味ある方はぜひ行ってみてください。
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世田谷美術館