信州の風情ある工芸品、松崎和紙
信州で泊まったとあるホテルの回廊に、ずらりとぶら下がっていた風鈴。涼しげな音色が、夏らしい風流な趣を醸し出していましたが、私の目が釘付けになったのは、風鈴にぶら下がっていたこの和紙の短冊でした。ざらりとした手漉きのような質感です。自然の草花をすき込んでいる様子にも味わいがあります。聞いてみると、長野県大町市で作られている松崎和紙という工芸品だそう。
ホテルの部屋にはこんな和紙の箱もありました。自然の葉っぱがランダムにすき込まれている様子が、ほのぼのと癒されるような温かみがあって好ましいです。
調べてみると、定かではないようですが、信州松崎和紙の歴史はたいそう古く、1042年に神社の奉公人がお祭りのために野生の楮を使って紙を作ったのが始まりではないか、と書かれていました。その後は農家が冬の農閑期に副業として和紙作りを行い、次第に技術が伝承され、発展して行ったのだとか。大量生産の紙が普及するようになって、今はだいぶ廃れてしまったようですが、わずかながら手作りの工房が1軒残っているそうです。
大町市はとにかく水がきれいで、町中のあちこちに湧き水を汲めるスポットがあります。この水の清らかさも、和紙作りには適していたのではないでしょうか。
こんな美しいトレイが販売されていて、いま我が家で愛用しています。自然で素朴な草花の風合いや質感が、なんとも癒されるようで、見ているだけで心が和みます。
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松崎和紙