被災地と被災経験地からの⼯芸作品展⽰
渋谷にある不思議なかたちのビル。ミキプルーンで有名な、三基商事株式会社のビルだったところです(現在会社自体は移転)。
設計は、以前ここのブログでも紹介した「川久ミュージアム(ホテル川久)」と同じ、永田祐三。この不思議な形のモチーフは、メキシコ・ユカタン州にあるマヤ文明の遺跡ウシュマルだそうです。このビルの中に一度入ってみたいと思っていたら「⽇本⼯芸週間2024」の展示が行われていました。
展示のテーマは「被災地と被災経験地からの⼯芸作品展⽰」ということで、現在も大変な状況にある能登地方の工芸品と、過去に被害のあったいくつかの地域の作品が展示されていました。
こちらは能登です。能登といえば輪島の輪島塗が有名ですが、輪島は1月1日の震災時に火災が発生したために甚大な被害を受けたことはニュースでも大きく報道されました。今も復興はなかなか進んでいません。つい先日も豪雨による水害で、さらなる大きな被害を受けてしまいました。
能登の人々にとって輪島塗はとても身近な日常の漆器であり、昔から住んでいる人の家には、輪島塗の御膳が何十客もあるそうです。お祝い事やお祭りの時には、この御膳を出してきて、親戚や友人たちを招いてご馳走を振る舞う風習があります。何百年も昔の漆器を今も大事に使い続けている家もあるそうです。
そんな大切な御膳も、震災によって家屋が全壊してしまい、取り出せなくなってしまったり、壊れてしまったり。手放さざるを得なくなった家がたくさんあるとのこと。
能登町にある発酵食とイタリアンの宿を営む「ふらっと」のベンジャミン・フラットさん、船下智香子さんご夫妻が、その輪島塗をどうにか救済できないかと立ち上がりました。輪島塗は能登の人たちにとって魂のようなものであり、未来へ繋げていきたい伝統文化です。夫妻は倒壊した家屋から輪島塗を引き取り、綺麗に洗ってできるだけ元に戻し、必要とする方に届ける、という活動をしています。それらの内容を紹介した展示が行われていました。
上の写真は、そんな中でも傷付いてしまった漆器を、輪島塗の工房「輪島キリモト」さんが直しを施し、さらに美しく蘇らせてより価値の高いものにした「リボーンプロジェクト」作品。長年使われ愛されてきた輪島塗に現代の技術を施しモダンに蘇った、深い物語のある素敵な作品になりました。こちらは販売も行われ、それは輪島塗の職人さんたちの仕事の再建に使われるそうです。輪島キリモトさんも震災で自宅や工房が倒壊し、先日の水害で追い討ちをかけるような被害に遭い、今も大変な状況です。
能登の活動状況などは、以下「ふらっと」さんのHPをご確認ください。ボランティアの募集や寄付の受付も行なっています。
能登イタリアンと発酵食の宿 ふらっと
さて、そのほかにも、過去に被害のあった各地の工芸が展示されていました。上の写真、石のように見えますが、実は和紙!!持ってみるととっても軽いのです。
不思議な質感でちょっと驚きました。佐賀県にある「名尾手すき和紙」だそうです。知りませんでした。世界的な有名ブランド等ともコラボを行なっている和紙工房です。繊細で驚くような美しい質感の和紙が並び、見とれてしまいました。
肥前名尾和紙は300年以上の歴史を持つ伝統的な和紙だそうで、最盛期は100軒くらい工房があったそうですが、現在はなんと1軒のみ。しかも数年前の豪雨災害で大きなダメージに遭ってしまいました。工房も自宅も土砂崩れの被害にあって全壊し、作品も全て埋もれてしまったそうです。しかし、そこからもう一度立ち上がり「和紙とは何か」を改めて問う、新しいインスタレーションに取り組んでいるそうです。とても見応えがありました。
名尾手すき和紙 https://naowashi.com/
展示は残念ながらもう終わってしまったのですが、能登の活動、名尾手すき和紙さんの活動等、ぜひチェックしてみてください。
mtも実は和紙でできてる、と何度もここで書いてますが、mtをきっかけに日本の伝統文化、和紙の世界を少しでも知っていただけたら嬉しいです。
ちなみに、この三木ビル、12月には取り壊されてしまうんだそうです。えー!!ユニークないいビルなのに、もったいないすぎる!!誰かここも救済してくれないかなあ〜。