「JA全農とっとり 果実袋工場見学」の巻
ラッピングに使えそうなアイテムを求めて旅をする「mt stock」プロジェクト、今回オギハラさんと一緒に訪れたのは、鳥取県の「JA全農とっとり果実袋工場」さんです。
ここで作っているのは、梨を育てる際にかぶせる「果実袋」。つまり農業用製品なのですが、ずいぶん前から雑貨好きの人々の間では「かわいい!」と密かに人気を博してきたアイテムなんです。
そんな果実袋がどのように作られているか、見学させていただきました。
「梨」を守るための袋
果実袋とは、特殊な撥水加工を施した紙の袋です。果樹園などで栽培中の果実にかぶせ、根元を紐もしくは留め金で閉じることで、日光や虫や雨などから果実を保護し、果面を美しく保つことを目的としています。
リンゴやぶどうの栽培時にも果実袋は使われますが、ここ鳥取県は全国有数の梨の産地。そのためこの工場では、主に梨農家さんのための果実袋を作っているんです。
オギハラさんが手にしているのが、果実袋です。
中央に押された梨のスタンプがかわいい!
そんな果実袋の、紙好きの心をくすぐる独特の味わいに惹かれたオギハラさんは、業務用の袋を仕入れて、ご自身のお店で販売してきました。
雑貨やポストカードなどを入れる袋として使っていただいているそうです。
「お店でも、この袋は果物を入れて育てるための袋なんですよ、と言うと、お客さんの反応がすごくいいんです」
さて、まずは袋の素材となる紙に「ロウ引き」加工を施している様子を見せていただきました。ロウ引きとは、熱して溶かしたロウの中に紙をくぐらせて、冷却して固め、紙に強度をつけること。さらに植物油も塗って撥水性を高めます。
「昔の傘も油を塗って撥水加工していたんですよ。屋外で使うものですし、長くて半年ほど袋をかけていることもあって、かなり丈夫なものが求められるんです」と工場の方。
表面に透明感が出て、紙のニュアンスが変わってきます。
巨大な原反(ロール紙)が並ぶ様子は、なかなかの迫力です。
四角いものがロウのかたまりです。このロウに熱を加え、液状にしたものを使用します。
また、ロウ引きのための紙は強度のある特殊紙を使っています。
「昔は新聞紙なども使っていたんです。でも最近は気候の変化もあって、新聞紙ですと、どう加工しても長期間もたなくなってきたんです」と工場の方。
ここで、オギハラさんは工場のすみに置かれた紙の山に目を留め、「くしゃっとなった紙もいいですね」とつぶやきました。
聞けば、掃除のために紙の切れ端を溜めているとのこと。紙モノ全てを愛するオギハラさんの目には、それらも宝物のように見えるんです。
カラーワックスペーパーを両手にうれしそうなオギハラさん。
日光を遮るために袋の内側を黒く加工しています。
「同じ品種の梨でも、産地によって求める遮光度合いが違います。たとえば九州ではより遮光効果が強い袋をかけないと、果実が日焼けしてしまうんです」とのこと。
見せていただいた袋の中には、遮光度が高く丈夫な三重袋もありましたが、それでさえも強い雨によって破れることがあるそう。ゲリラ豪雨もめずらしくなくなっている昨今、紙の強度にも課題が課せられています。
紙のすみに生じた小さなしわに目を向け、「筋入りなのも、味があっていいですね」とつぶやくオギハラさん。すかさず、「うちとしては筋は出てほしくないんですけどね(笑)」と苦笑する工場の方。お互いに真剣なんです。
機械で折り目をつけて袋状に加工します。
それを手作業でチェックして果実袋の完成です。
農家さんの思いに応え続け、あらゆる形の袋が生まれた
続いて工場内にある事務所で、袋の見本も見せていただきました。最も小さな袋を見て、「ちっちゃくてかわいい!」とオギハラさん。これは「二十世紀梨」用の袋なんです。青梨のひとつである二十世紀梨は、少しの汚れや傷でも目立ってしまうため、袋かけ作業を2回も行うそう。
最初は小袋、少し実が大きくなったら大袋、と袋をかけ直して大切に育てるそうで、その努力が、すべすべで美しい黄緑色の二十世紀梨を作り出しているんですね。
他にも、袋を横向きにかけたときに、中に水が溜まってしまうのを防止する袋など、特注で作ったものもありました。そんなふうに地域ごとの気候、育て方に合わせて要望に応え続けたところ、定番の形のサイズ違いだけでも14種類、オーダーを受けて作ったものも合わせると、なんと110種類以上の果実袋を作るようになったそうです。
「袋かけ」は重要な作業ですが、両手を上げた姿勢で一つひとつの果実に袋をかけ続けるのは農家さんにとって重労働。そこには、より良い品質の果実を作りたいという思いがあり、その思いに応えるため、果実袋も要望に応じて、どんどん進化していったのです。
「農家さんと、袋を作っているみなさんの絶え間ない努力や熱い思いを知ると、『かわいい』なんて言って雑貨として販売させていただいて、なんだかすみません、という気持ちになりますね」とオギハラさん。
本来は農家さんが使う果実袋を別の視点から愛おしそうに見つめるオギハラさん。工場内でも静かに熱く発揮される紙モノへの情熱に、周囲も感化されていきます。
「いつもこういう感じなので、最初は不審がられるんですけどね(笑)。でも時々、カモ井さんみたいにおもしろがってくれる方もいます」とオギハラさん。
そう、マスキングテープも、工業用のテープだったものを、オギハラさんたちの情熱を受けてカラーバリエーションを増やし始めた結果、生活雑貨としてヒット商品に育っていったという経緯があるんです。
さて、最後にお知らせです。「JA全農とっとり 果実袋工場」さんのご協力のもと、mt stockオリジナルの果実袋ができました!
雑貨やちょっとした贈りものを入れるのにもぴったりなアイテムです。ぜひお使いくださいね。
果実を守るためだけに存在していたはずの袋が、より多くの人の暮らしを彩っていく。オギハラさんの紙モノへの愛が、いつのまにか思ってもみなかった人やモノ同士をつなげていく……その不思議なエネルギーをあらためて感じる旅になりました。
JA全農とっとり果実袋工場のみなさん、ありがとうございました!
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REPORT
オギハラナミさんと巡る旅のレポート
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「紙モノ探しの旅」で見つけたアイテムを使って、
オギハラさんに素敵なラッピングを作っていただきました!